第1章1項
家づくりへの道のり -ある夫婦の物語り-(2)

彼はゆっくりした口調で妻に、
「たしかに見栄えは良いし、明るいし、機能面もよく出来ているかもしれないよ。しかし、注意してよく見ると合板や新建材で上手くまとめてあったり、本物の無垢板に見せてはいるが端を見ると二枚の板を貼り合わせたものがあったり、一部は漆喰塗りを見せていた所もあったが、ほとんど壁はクロス貼りが多く、天井もクロスを貼ってあるので内部の隠れた木組みの構造など全くわからない。その天井のクロス貼りの下に、いま流行の丸梁が化粧で十字に組まれて取付けてあったが丸梁の端が中途で終わりいかにも飾り物に取付けてあり、どう見ても実家の木組みのように構造的に組まれていると見えず、何か違和感を感じたよ。」

「でも、デザインも良く、こまかな所にも気をつけてあったり間取りもよく考えてあるし・・・どうしてなの?」
妻は不満気に口をとがらせていた。

「よく考えてごらん。欧米に比べ日本の家は平均的に三十年ぐらいしか持たない。それは日本の風土に合わない建材を使ったり、木組みが簡略化したり、洋風化の貼り物住宅で短命になっていると思う。また、これからの家は必ず起る大きな地震にも耐えるだけの構造になっていないとだめだと思う。大事な資金を使うからずっと先のことも考えないといけないのと違うかな。」

夕方、妻の不満を引きずって家にたどり着いたが、彼の考えている家造りとはまだ少し開きがあったのでホームページで角度を変えてみせようと思った。

いろいろと各社のホームページを見ていても、やはり展示場にある戸建住宅の延長に見える。
時間をかけて見ていたところ、
「あれっ、ちょっとこれを見てごらん。他社と全く違うコンセプトで造っている会社があるよ。やっと考えていたものに出合った感じだなあ。」

妻はつられて見ていたが、山の上に建つその重厚な木組みの住宅を見て、これまでと違うものを発見したようだった。

後日、二人の意見が合った時点で、丹波の森にある建造物「四度石遊山」を見に行くことになった。