第2章■伝統の木組と土壁の家「石場建足固め構法」

第2章1項
伝統構法で建てる家が一番新しい家である

世界に秀でたすばらしい建築構法を持つ日本の家が様変わりしている。
 鋼板や平板瓦屋根に薄い壁で覆われた新建材や、輸入材主体の洋風の家がいたるところに林立している。しかもどれを見ても類似したデザインで個性がない。

いつからこんな風になってしまったのか。実になげかわしい現風景である。
 室内は高気密で天井も壁も密閉され、部屋の空気の流れもなく、F4の認可された新建材からでも発散される化学物質が微量であるが知らずと停滞し、非健康的な空間を創り出している。
 見栄えするデザインと間取りに洗脳され、大切な本来の住環境を忘れてしまっているのではないか。

日本の伝統構法で建てた家が何故、一番すすんでおり新しい家なのか。
 ここに説明したい。

まず無垢材の木組構法で筋交いや金物を使わず、「石場建足固め構法」で木が持つ本来の柔軟性を生かした免震性の強さにある。これは千年前に建立された寺社仏閣を見れば一目瞭然である。
 地震で揺れがきても元に戻る復元力のある柔構造であり、筋交いや金物で固定し過ぎた木は柔軟性を殺された硬構造であり、破損してしまう。今の建築基準法が足かせとなっているのである。
「石場建足固め構法」については実物大の振動台実験を中心に後程、詳しく述べたい。

次に竹小舞(たけこまい)を編んで土を塗り重ねた工法の壁は、壁内に空洞をつくらず自然に温度湿度の調節が出来て土壁の外に厚板を取り付けるので、断熱材を入れる必要はないのである。新建材の断熱材ではおよばない多機能を有しているのである。
 内側においても塗り壁で柱を見せる真壁工法をとるので、合板やクロス貼りで覆う必要もない。シックハウスなどは無関係なのである。屋根の日本瓦も暑さ、寒さを防ぐ機能を持っている。つまり、日本の家屋は既にパッシブクーリング、パッシブ暖房を遠い昔から採り入れていたのである。実にすばらしい技術で今さら驚かされるのである。

「伝統構法で建てる家が一番新しい家」である意味がここにある。