第2章10項
地震で倒れない伝統木造建物(2)

実験の結果、所見として言えることは礎石に直接柱を建て緊結していないため揺れに対し持ち上げられたり石の上を柱が滑ったりして地震エネルギーを逃していることがわかり、建物にかかる力は減少され、有効であることが判明した。

そして、大きく軋み上下左右に揺れ動いても元の形に戻り、決して倒れたりはしない。最大層間変位角は大きい屋根のモデル棟で1/15rad(ラジアン)、小さいモデル棟で1/20radであり、倒壊の危険性のある1/120radには至っていない。これは「足固め」や「差鴨居」、「貫」などの横架材が伝統の仕口でしっかり継がれており、引張りと圧縮の力に効いていて柱が大きくしなっても揺れを吸収しているからである。

壁、天井、床面などが柔構造であるため大きなダメージが起っていない。

部分的には足固めの損傷は微少であり、一部、屋根を支える貫を渡してある束に割れが生じていたがおおむね水平材は損傷がなかったように思われる。

今後の施工上参考として考えられるのは、今回の実験では柱や足固め、差鴨居はすべて杉材を使われていたが材質的には柔かいので檜にする方がベターである。また柱と礎石が接する柱角は丸面に削り割れを防ぐ。

そしてまた、おしなべて寸法がやや小さめであったため特に柱の断面欠損による損傷が若干みられているので柱は最低五寸(15㎝)角以上、差鴨居は四寸(12㎝)×一尺(30㎝)、足固めは四寸(12㎝)×八寸(24㎝)とするのがよい。

実験を終えて感じたことは阪神大震災クラスの揺れに対して予想以上に粘り腰をみせ、丈夫であったと言うことである。

今後あと一、二度の実験を経て必ず伝統構法の強さがさらに実証され、国土交通省が建築基準法の仕様規定を新しく設け告知される日は近いと思われる。そうなれば、現在のように「限界耐力設計法」で算出された数値を「構造計算適合性判定機関」(ピアチェック)へ持って行き、時間をかけた確認申請の流れがもっとスムースになるのである。せっかく受け継がれてきた大工技能が思う存分発揮されるためにも一日も早い対策を願ってやまない。