第2章10項
地震で倒れない伝統木造建物(追記①)

-追記-①

平成19年1月30日と2月2日実施され、その内容を分析し、所見を述べたがその後、平成20年11月28日と12月4日の二度、再び実験が行われた。

今回は建物を「関東型」と「関西型」の二棟を用意し、別々の日に実験を行った。実施者は日本住宅・木材技術センターを事務局とする「伝統的構法の設計法作成及び性能検証実験検討委員会」で、前回と同じ兵庫県三木市にある耐震工学研究センター(Eディフェンス)の振動台を用いた。

二棟の仕様は土壁による建築基準法の求める耐力壁量と四分割法による壁の配置、間取りは同じであるが「関東型」は土台勝ちで長ホゾ加工した柱を土台に差し入れている。一方、「関西型」は柱勝ちの石場建て(石と柱の間にはダボあり)足固め、貫で緊結し、両棟とも接合補強金物などは使用していない。振動波は前回と同じくJMA神戸波で震度6強の地震波100%であった。

その結果、二棟とも大きくしなり、「関東型」は何本か柱の曲げ破壊がみられ、一部に壁土のはく落があった。「関西型」はそれよりは損傷が少なかった。しかし、双方は何本かの柱の損傷があったにもかかわらず、実験後に建物の変形がほとんど残らなかった。

土壁の告示仕様の妥当性も実証され、伝統構法で建てられた木造住宅は崩壊しなかったのである。このことは、屋内に人が居ても建物の倒壊がみられなかったので被害がなかったことを意味する。また一歩、伝統構法、特に石場建ての強さが実証され、将来に向け大きな希望の波紋を投げかけた。