第2章12項
足固めを渡す

今日は大事な木組の基本にあたる足固めを渡す日なので、施主さんには是非とも立会ってもらった。普通の基礎の立ち上りに土台(横材)をアンカーボルトで固定させ、その上に柱を建てる工法と根本的に違い、コンクリートに固定された礎石(御影石)の上に直に柱を縦に建てる。柱の太さは断面欠損がない六寸(18㎝)を使った。

木を横にすると接地面積が大きくなり、腐朽の原因にもなる。荷重で土台にかかる力も大きなもので長い期間ではダメージがある。木は縦に使う方が耐力的にも強く理にかなっている。柱と柱の間には足固めという土台に代る横材を渡し、長枘(ながほぞ)差しと車知栓(しゃちせん)で強固にかためられる。この構造材は土台に代る一番大事な木組で地震力を吸収し、逃がし、復元させる建物の最下部の要である。金物は一切使われない柱と足固めを継いだ下は礎石との間に空間がある。身近な例で言えば祭りに使う神輿(みこし)の下部が同じような組み立てになっている。家の自重が加重されても耐える柔構造で且つ、免震力を発揮する性能を持っている。この足固めは成(せい)(高さ)八寸(24㎝)、幅四寸(12㎝)と最大限のものを使うことになった。材質は檜である。

事前の説明と違って、目の前で施工してゆくさまを見て満足されていた。