第2章27項
和室

和室の座敷はまず畳である。防腐材の加工をほどこしてある畳は健康上よくないので、天然の国産藺草(いぐさ)で作られた畳を全和室(十帖、八帖、八帖(二階))に敷き詰めた。何とも言えない香りがし、気持ちがよい。畳は熊本八代産の天然藺草の肥後表(ひごおもて)を使う。香りがよく調湿性が高く、足ざわり、肌ざわりもよい。又、粘りもあって強い特徴を持っている。藺草の下の床はすべてわらで作られ、底は棕櫚裏を使う。畳べり(縁)は良質の麻べりを使っている。藺草には福山、尾道産の備後表(びんごおもて)が最高のものとされているが、現在は非常に少なくなっている。

この他中国産などの輸入物もあるが、香りや粘りの点で国内産よりやや落ちる。参考までに人造の化学表や畳の目が普通の半分程の細かい琉球表などがある。

座敷には造り付けの床の間、付け書院、床脇など伝統の造りを守ったので大変格式のある落ち着いた雰囲気を表現している。八帖の間には仏壇を安置し、続き間に堀こたつを造り、また二階の和洋折衷の書斎には造り付けの本棚、欅(けやき)の厚板の座敷机を設けた。この座敷机には板目に渦巻き状の年輪模様の木理(もくり)がみられる玉杢(たまもく)の板を使い格式を高めた。

長押の上の欄間は杉材で彫刻欄間にした。芸術性の高い細工物である。

書院も檜で絵模様を入れた「組子(くみこ)細工」の趣きあるものにした。

障子は格子を上下に動かすと下がガラス面が出てくる「雪見障子」にし、腰板には屋久杉を使いそのまわりの枠に神代杉(じんだいすぎ)を隅丸として使う。屋久杉とのコントラストが美しい。

襖は和紙で作られた「手漉(てすき)本鳥の子ふすま」仕立てにした。

この和室を眺めていると中世前後の座敷飾りが彷彿される。