第2章9項
石場建足固め構法

読んで字の通り「石の上に柱を建て、その足元を固める。」実にわかりやすい名称である。人間でも足腰が弱いと何をするにも支障をきたす。

在来工法ではコンクリートの基礎の「立ち上り」に土台である木材を横に置き、アンカーボルトで緊結し、なおかつ柱との接合部に金物と筋交を取り付ける「剛」造りになっており、地震によって力を加えられた時に傾く角度(層間変位角)が建築基準法で定めている角度(ラジアン)を超える揺れが来た時、金物の取り付け部が割れたり筋交が破損したり、倒壊の危険性を含んでいるのである。

しかし、伝統構法の建物はその反対で、傾いて倒れかけてもしぶとく粘り、元に戻る復元力がある。この弾性限界の数値は一般在来の木造住宅をしのいで高いのである。つまり、木の持つ本来の性質である粘りの「柔」造りがきっちりと効いているのである。この柔構造をもっとも発揮させるため、石の上に柱を建て、柱間を継ぐ「足固め」と「差鴨居」や「貫」の横架材が免震の重要な役目を担っているのである。

そこで考えられたのが、日本古来の免震構法である「石場建足固め構法」が脚光を浴びてきた。

日本の中世から近世にかけての社寺仏閣の建造物はほとんどこの構法をとっており、幾多の地震、大風にも耐えてきた力強さがある。それは自然の石の上に柱を直に建てる「光つけ」と言う、柱の下を石の凹凸に合せて加工して柱を建てる匠の技で固定する束工法である。この柱との接合方法は構造力学上、水平振動による曲げモーメントが発生しないため、構造部材に応力が生じず柱が折損しない大きな利点がある。