第2章5項
着工準備 -構造材の集積と作業-

施主さんの土地が180坪もあったので基礎工事が始まる前、余った土地に屋根付の広い作業場を仮設することが出来た。これなら雨天でも作業が可能であるし、何かにつけて好都合であった。

柱や梁、桁などの用材に太くて重量感のある地松、地檜の梁用材も積まれ、その無垢材の醸し出す木の香りはすばらしいものである。

あくまで伝統木組みの構法を徹底させるため、工場でのプレカットを一切せず、棟梁の指示のもと木材を選別し、ねじれ、曲がり、歪みを調整し時間をかけて昔ながらの手刻みの作業が開始された。

大工、棟梁が図面をもとに板図に墨さしで番付を書き込んだ。そして、加工材に具体的な寸法や位置を墨付けをする。いの一番の墨入れからすべての構造材に入れられ、着工の準備がほぼ整った。物事の最初に行うことを「いの一番にする」と言うのは、この墨入れからきた言葉である。しばらくの間、刻みや鉋(かんな)がけ、軸組みの大切な仕口、継手などの作業が続いた。